Q:
30歳女性です。
真剣に悩んでいるのでアドバイスをいただけることを切に願っています。
結婚を約束している彼が妻帯者なのです。
先日彼が奥さんに離婚をきりだしたところ、一人娘が小学校を卒業するまでは、離婚も別居も合意できないとの答えだったそうです。
2007年の春ということです。
私達二人は、お互いの存在に深い安らぎや力がみなぎるのを感じるので、結婚は必ず実現させたいのです。
とはいえ、今の奥さんや娘さんの傷が最小限に済むようにもしたいのです。
偽善的かも知れませんが、みんなが納得できる形を見い出したいのです。
再来年の春まで、私はどのような心持ちで過ごせば、いいのでしょうか?
愛人という立場は好きじゃないし、自分の存在が小さな子供や長年彼を支えてくれた奥さんを傷つけていることを思うと、つらくなります。
でも、あきらめたくないのです。
彼を幸せにすることこそが、私の義務のように思えるからです。
そのことで、私も幸せになれる確信があります。
ちなみに、お嬢さんとは彼と一緒に5、6回は遊んでいて、彼抜きで私の部屋に来てくれたこともありますが、二人の関係は話してません。
厳しい言葉でも結構です。
どうかお導きくださいますよう、お願いします。
emi
A by Uchida:
こんにちは。ウチダです。
今回は、「大家」に回答ご指名ということですので、私がとりあえずお答えさせていただきます。
釈先生もきっと別の立場からお答えくださると思います。
さて、離婚についてのお訊ねですが、「こうすればいいよ」という「一般解」は離婚についてはありません。
夫婦が離婚にいたり、家庭が崩壊するに至るには余人の計り知れない無数のファクターが関与していて、どれが決定的なファクターだったのかを言うことはほとんど不可能だからです。
離婚について横から口を出してコメントすると、たいていの場合「他人にはわからないよ」という拒絶のサインが示されます。
ほんとにそうですよね。
ですから、私は離婚については「ご自分の思う通りになさってください」と申し上げることにしています。
というわけで、ご質問への回答は「お好きになさってください」です。
でも、これでは回答になりませんので、すこし「おまけ」の話をします。
離婚について私が知っている唯一の経験的教訓は、「失敗する」仕方をスマートにする方法はある、ということです。
離婚で傷つくというのは(当事者の場合ですけど)、「自分が離婚で終わるような結婚をしてしまったこと」の敗北感のもたらす痛みもありますけれど、それと同時に「自分が離婚問題を適切に処理できないような、決断力や状況統御能力のない人間であること」についての自己嫌悪もあります。
長くその人の傷となって、その後の生き方に影響を残すのは、しばしば「失敗した」ことの経験よりもむしろ、「自分は〈失敗すること〉にさえ失敗した」という自乗された失敗の記憶の方です。
「失敗処理」そのものは「失敗」とは「別の問題」です。人間は「〈失敗すること〉には成功した」というような次数の高い行動を選択することができます。
この場合は、どうやって「てきぱきと」問題を処理するか、というたいへんシンプルでビジネスライクなことに頭を使うことになります。
すでに「離婚すること」を前提としておいて、その上で生じる諸問題についてネゴシエイトするというのはとてもよいやり方です。
というのはこういうふうに議論を立てると、「話をややこしくする」ことで誰も状況を動かせない状態を作り出すことを回避できるからです。
話をややこしくする人間のねらいはたいていの場合「現状維持」です。
こういう公的な場所に「離婚話」を持ち込むというのは、「離婚はすでに既定事実である」ということを内外にアナウンスするたいへんに効果的な方法ですから、あなたはすでに着々と手を打ちつつあるというふうに言ってよろしいかと思います。
お手紙だけ読むと、先方の奥様は「結論の先送りという結論」という複合技を出す方のようです。
こういう方は「あなたと再婚しないという条件でなら離婚に同意する」というような複合技(リンケージをふやして決断を困難にするという戦略ですね)を将来的にお使いになる可能性もありますので、その点にはご注意が必要かと思います。
問題そのものをある種の「外交取引」のようなものとしてクールかつリアルにお考えになることを私はお薦め致します。
ろくなお答えになってなくて、申し訳ありません。
お幸せになってください。
A by Shaku:
釈です。大家さんからのお答えがありましたので、もう私がお話する必要もないとは思いますが。
そもそも今回は「関係性」のお題なので、emiさんがどういう人かも知らず、当事者(この場合はemiさんだけではなく、彼と彼の奥さんや娘さん)それぞれの思いや覚悟を知ることなしに適切なアドバイスはできません。
ただ、emiさんがおっしゃるように、それぞれができる限りよい関係性を維持したままで話を進めていきたいというのであれば、重要なことは「モノゴトの手順」と「自分自身でなんらかの線引きをする」ことだと思います。
まず離婚は再来年の春まで待ちましょう。今のemiさんには気の遠くなるほど先の話に感じるかもしれませんが、彼と彼の家族そしてemiさんにとっても必要な手順ではないかと思います。
そのかわりというわけではありませんが、来春あたりから彼は家を出て家族と別居なさったらいかがでしょうか。
しばらくの別居状態を経て離婚へと進むわけです。その際、彼はきちんと一人暮らしをして、emiさんと一緒に生活を始めるのは離婚後のほうがよいと思います。
と、まあ、もっともらしく書いておりますが、これらの提案には何の根拠もありません。当事者それぞれがなんらかの線引きをしませんか、という話です。
ところで、文面から推察するに、emiさん自身、自己嫌悪や罪悪感に悩まされているようです。もしかしたら内田先生にきつく叱ってもらいたいのでは? また現状へのあせりと不安も強いとお見受けします。ここらで一度、深呼吸をして、力を抜いて、楽にら~くに。リラックス、リラックス。なるようになりますから。
仏教ではなにごとにつけても「執着が苦しみの原因」と考えます。いざとなったらあんな男くれてやらぁ、というくらいの気持ちもどこかにもってみることが不安を軽減する道です。