質問・39 攻撃的な言葉づかい、気になりませんか?
Q:
はじめまして釈先生
ジンと申します。よろしくお願いいたします。
早速質問とゆうか気になっていることがありまして・・・
最近TVの解説者やニュースアナウンサーの言葉づかいが気になります。起爆剤、戦果をあげる、など(ちょっと思い出せないのですみません)など言葉の表現が戦争を連想させるものであったり、攻撃的で、暴力的な表現が頻繁に使われているのが気になります。(NHKでさえ)。私は27歳で普段何気なく乱暴な言葉使いをしてしまうことがありますが、いくら大衆にわかりやすく表現しているとはいえもっと美しいとまではいかなくても、普通の表現をしていただきたいなーと思うのですが、釈先生は気になったことはありませんか?
A:
しばらく文章を書くことに消極的な日々が続き、応答が大変遅くなっております。ご質問をくださっているみなさまには申し訳ない状態です。すみません。アップが滞っているおかげで、担当:Fさんと顔を合わせるのがつらい日々です。
今回、ジンさんからTVのニュースアナウンサーの言葉使いが気になるとのご指摘をいただきました。私自身の感覚でいくと、ニュースアナウンサーの言葉使いはまだかなりマシなほうだという認識(なにしろ、アナウンサーも亀田親子も一緒くたに情報発信するのがTVですからね)だったのですが、このあたりは内田先生はじめ、何人かのご意見をうかがいたいところです。
私が今、TVを見ていて気になるところは、
1.食事している場面が多い(グルメ番組・旅番組などなど)。
2.スーパー(っていうんですか。あの画面に字幕がでるやつです)を出し過ぎ。
というところです(すみません。ジンさんのご質問からかなりはずれています)。親しい間柄でもない人の「ものを食べている様子」など、見たくないんですよ。「食べている」って、すごく生理的な姿じゃないですか。ある意味、性行為とか排泄行為などとも直結しているようなものでしょ。えっ?そんなこと考えるほうがヘン? いやいや、でも、見ていて「ああ、きれいだなぁ」って思えるような食事の姿を見せてくれる人が全然いないんですよ。とにかく、食べた後の表情やコメントを競い合うの、やめてくれないかなぁ。
それから、なんであんなに字幕をつけるんでしょうか。これは、きっと、日本人の「聞く」能力が枯れてきているからに違いありません。また、あのスーパーをひんぱんに出すことによって、さらに枯れるのでは。やはり、これからの日本社会のキーワードは「聞く」ですね。
ウチダです。Fジモトさんから「ウチダ先生も書いて下さい」という命令がありましたので、私見を書かせて頂きます。
軍事の用語で語るというのはご指摘のとおり、あらゆる場面で用いられております。
政治の用語がそうですね。
「本丸」だとか「陣笠」だとか「金城湯池」だとか「日和見」だとか、みんな戦争に関する言葉です。最近は「刺客」というのもありましたね。
スポーツもそうですね。
野球は軍事用語が多いです。
ベースは「塁」(城塞)、ワンアウトは「一死」、フォースアウトは「封殺」。
サッカーやテニスの「前衛」「後衛」というのも軍事用語です。
殺伐とした軍事用語を使わないスポーツはゴルフくらいじゃないかしら。
その他、人事にかかわるあらゆる場面で軍事用語が使われています。
でも、問題はその頻度が増しているのではないかという印象を持たれた点ですね。
実は私も同じ印象を抱いています。
どうもメディアにおける言葉使いが殺伐としてきていると思います。
これは社会全体が好戦的になっていることの徴候なんでしょうか?
おそらく部分的にはそうだと思います。
でも、人間はいきなり好戦的になるということはありません。
それは沈黙のうちに進行しているある種の地殻変動的な趨向に対する「反発」として出てきているんじゃないかと私は思っています。
「男性的な価値」というのが急速に値崩れしている。
買い手がつかなくなっている。
もう「男性的価値」を構築する基盤も、それを支える制度も、自己形成のロールモデルももう今の日本にはありません。
そういう危機的状況のこれは徴候じゃないかと思うんです。
「弱い犬ほどよく吠える」といいますね。
半ベソをかきかながら「オレは男だ」とがなりたてている泣き虫な子どもの悲鳴のように私には聞こえます。
だから、ほっとけばいいということではなくて、だからなんとかしないと「たいへんなこと」になるんじゃないかと実は心配しているんです。