Q:
釈住職様、初めまして。
東京都在住、42才デザイナーのペンネームakiと言います。
質問があります。宜しくお願いします。
「哲学(者)」と「思想(家)」の違いはなんでしょうか。
辞書で調べたところ違いがはっきりわからなかったので、物知りの兄に聞いてみたら、「哲学はギリシャで生まれたものだから、ギリシャ哲学そのもののこと、思想はそれ以外ではないか」と教えてくれました。
なんとなくわかったのですが、それだと「インド哲学」というのは哲学ではないのでしょうか。
更に「人生哲学」という言葉も、ギリシャとはなんの関係もなさそうなところで使われているような気がします。
A:
この質問については、私よりもうまく説明できる人が多いと思いますが、とにかく私の印象でお話します。
「哲学(者)」と「思想(家)」という領域って、多くの部分が重なっているんですよね。「あまり変わらない。そんなのどちらでもいい」という人もいれば、「いやいや、それは、これこれこのように違うのである」という人もいます。その人その人の「哲学」や「思想」の定義によって、相違するんですね。
「哲学(philosophy)」よりも「思想(thought)」という用語を積極的に使いだしたのは、それまでの西欧中心だった知の体系に対するカウンターだと思います。構造主義などを先駆として、知の体系が大きく変化したときに、従来の哲学という言い方を避ける傾向が出てきたようです。
よく使われる区別としては、(せまい意味での)哲学は学問的手続きであり、思想はもっと日常の生の営みに根ざした取り組みである、という言い方です。確かに、現代思想では、社会・宗教・芸術・性など、あらゆる場面や現象を知の対象にします。つまり、哲学よりも思想のほうが、カテゴライズされにくいので、かえって使い勝手が良いということもありそうです。