質問59・お墓はどうやって探したらよいのでしょう?
Q:
こんにちは。初めまして。
どこで聞けばいいのか分からなくてこちらにメールしてみました。
私の父方の祖父、というのが自分の家(?)というかルーツということになると思うのですが、ご先祖さまにあたるお墓がその祖父の母のものしか場所が分からないのです。
もともと九州の方に住んでいたという話は聞いているのですが、祖父は覚えていないようです。もしくはあまり話したくないようだと祖母が言っていました。
お墓参りでうちの名字の墓は(上に書いた)ひいおばあちゃんのものしかないというのは、どうなのかなと思うのですが、代々のお墓があるとすれば調べる方法はないのでしょうか。もしくは供養の仕方など、教えて頂ければ嬉しいです。
(匿名希望・女性)
A:
調べる方法ですか。
まずは、一度その”ひいおばあちゃんのお墓”があるお寺に尋ねてみてはいかがでしょうか。
お寺の住職は地域の人間関係に詳しいので、何らかの情報をもっている可能性があります。さらにお寺には「過去帳」と呼ばれる戸籍記録のようなものがあります。現在は差別問題や個人情報の問題等で簡単に見せてくれなくなりましたが、「自分の先祖をたどりたい」という理由であれば大丈夫でしょう。そこに何か手がかりがあるかもしれません(よく「過去帳」には、どこそこの出身とか、誰の子供とか、誰の奥さんとか、どんな仕事をしていたなどのちょっとした情報が書き込んであったりします。だから、興信所などが「見せてくれ」などと訪ねてきたりします。もちろん、そんな手合いには見せません)。
また、お寺とお寺にはずんぶん昔からのネットワークがありますので、「〇〇寺さんへ行ってみなされ」的なつながりへと展開することが期待できます。あるいは、お寺の人に土地の古老を紹介してもらい、話を聞きに行くことも意外と有効です。とりあえずそのあたりを手始めとしてはいかがでしょうか。
しかし、いろいろと調査してみてもわからなければ、それはそれでいいじゃないですか。ひいおじいちゃんにもいろいろと事情があったのかもしれませんからね。
ところで、「供養」ですが、「先祖教の供養」と「仏教の供養」を分けて考えねばなりません。
かの柳田國男は日本人の宗教を「先祖教である」と断じました。”先祖教”の特徴には、「死者が祖霊になるまでお祀りを怠らないこと」があります(亡くなった人の霊は、33年~50年くらい祀ると”祖霊”となって「個」が消滅する)。これは仏教ではありません。儒教とも道教とも違う。これを神道と呼ぶのにも問題があります。つまり”先祖教”です。そして、日本の宗教は、仏教であっても、キリスト教であっても、みんなこの”先祖教”になっちゃうって柳田は言うんですね。”先祖教”としての供養であれば、教義や行為様式はありませんので、その土地その地域の習俗で祀ります。自分なりに祖壇でも設けて、お祀りすればいいでしょう。
仏教の供養となると、先祖や身近な人を通して、生きとし生けるものすべての安寧と幸せを願って供養することへと展開することが肝要です。つまり、ご先祖を手がかりとして、すべての生命へとつながっていることを自覚しようというわけです。先祖を供養するだけでは、仏教と言えません。
そのため、仏教ではあまり「先祖」と言わずに、「先達(せんだつ)」と表現します。「先達」とは「先に道を歩んだ人」という意味ですので、血縁関係だけに限りません。
『慈経(メッタスッタ)』という短いお経があります。「テーラヴァーダ仏教の『般若心経』」と言われるくらい南アジアや東南アジアでは有名なお経です。『慈経』は「私が安寧でありますように。私の家族が安寧でありますように。私のまわりの人すべてが安寧でありますように」から始まり、最後には「すべてが安寧でありますように」と生命のつながりを実感するような内容になっています。慈しみの心を育むお経ですね。
というわけで、もしあなたが仏教徒であったり、仏教の考え方に共感されるのであれば、あまり無理してご先祖をたどる必要もなくなってしまいます。ひいおばあちゃんのお墓を窓口(!?)として、ひいおじいちゃんにもご先祖にもすべての生命にも、安寧を願って供養を実践すれば良いわけです。この精神に基づくのであれば、父方とか母方といった概念にこだわることは、(少なくとも仏教では)あまり意味がありません。
※かなり大雑把なお話をしましたので、もしあなたがきちんとした信仰や信心をおもちであれば、一度その宗教の手順を調べてみてくださいね。