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2005年10月05日

質問9:悪人正機(悪人正因)の基礎知識を教えてください。

Q:悪人正機(悪人正因)の基礎知識を教えてください。
                    (チカさん)

A:おお、わざわざ「悪人正因」を括弧に入れているところを見ると、『インターネット持仏堂』を読んでくださいましたね。まいどありがとうございます。

「悪人こそが救われる」というのは浄土真宗の専売特許ではありません。たとえば敬虔なクリスチャンに悪人正機の話をすると、すんなり共感してくれます。真宗もキリスト教も弱者の宗教性を大切にしますからね。ご存知のようにイエスは「貧しいもの・弱い者・苦しんでいる者こそ幸いである。なぜならその人こそ神の国に近いのだ」というようなことを語っています。これらはよく宗教的逆説性と表現されます。信仰が深くなればなるほど、自らの罪意識が深くなるからです。

さて浄土仏教では、「善人(=強者)は自分の力でできると思っているので、傲慢のワナに落ちているのだ」と考えます。この「傲慢さ」によって、仏の慈悲からより遠くに身をおいてしまうのです。それに対して悪人の自覚をもっている人は、仏の救いを求めます。だから、悪人こそが救われるのですね。そのことを本書では、「悪人を救うという願いを聞いて、まさに私こそ悪人であったと知らされる目覚め」と表現してみました。

ところで「悪人正機」という立場を、平安から鎌倉期における社会的状況でとらえる視点もあります。当時、悪人とは非差別者・非抑圧者を指す場合があったからです。親鸞聖人もそのことは視野に入れておられ、猟師や漁師や商売人など今まで悪人とされてきた人々へ心を寄せていろいろなことを語っています。「いし・かはら・つぶてのごとくなるわれらなり(道端にある石ころのような私たち)」という『唯信鈔文意』の文章は有名です。鎌倉時代の百科辞典である『塵袋』には、「悪人とはエタ・非人のこと」と書いてあるらしいです(@河田光夫)。悪人正機の教えは、そのような従来の宗教・仏教が相手にしない傾向にあった人々にとって、信心の軸を形成して生き抜く力となったことでしょう。

投稿者 iwamoto : 2005年10月05日 23:29

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